秋色の逗子から鎌倉へ
1997/10/21号より
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子どもふれあいの森パノラマ台より(絵・竹林久知さん)

中世の歴史の道を歩きながら、
海の広がるのびやかな風景を味わう

法性寺〜名越切通し〜子どもふれあいの森〜衣張山〜杉本寺〜荏柄天神〜頼朝墓廟

 秋は路傍の草むらや山道に見るべきものが多くなりますし、空気も澄んで景色もクリアに見えます。そんなすがすがしい一日、歴史にふれながら逗子から鎌倉の野辺の秋を楽しんでみませんか。

日蓮の息吹漂う
山腹の寺


法性寺山門付近

 JR逗子駅山の根側出口10時15分出発。線路に沿って鎌倉方面へ。お猿畠で知られる法性寺山門まで歩いて20分。まだ陽光に晩夏の香りさえ感じた街歩きから一変、この山門をくぐった途端に秋の気配が濃厚に。可憐なツリガネニンジンや野菊などの野草がそよぐ坂道を頂上まで登ってみよう。
 ここには文應元年、日蓮聖人が鎌倉松葉ヶ谷の草庵を焼き打ちされた時、白猿に導かれて岩窟に逃れてきて身をかくしたと伝えられている岩屋が祀られている。暗い岩窟から一歩出れば相模湾が広がる美しい風景だが、迫害の身をいやすことができたのだろうか……。


趣深い切通し


名越の切通し


鎌倉時代の要害、大切岸

 洋館の裏を通ってやや下ると、険阻な切通しに出る。鎌倉七ツ口の一つ名越切通しで、巨石を切りとった古道は狭く昼なお暗い。切通しの途中にまんだら堂跡があり、横穴式の「やぐら」と呼ばれる墳墓と、おびただしい数の五輪塔は中世のものであるという。コスモスが風に揺れて、やさしくその霊をなでているようだった。
 来た道を戻り、大切岸の尾根道を歩く。この切岸は北条氏が三浦氏に備えて造ったもので崖を垂直に削りとった砦である。延々と吃立する切岸は800mにも及ぶ。しかしこの大切岸は一回も使われることなく、三浦氏は鎌倉の域内で北条氏に敗れさってしまう。


パノラマ台から衣張山へ


頼朝が夏の暑い日に白い絹を張らせ、
雪景色に見せて大蔵から涼んだという衣張山山頂

 もう少し秋が深まれば紅葉も十分楽しめそうな山道を15分程歩くと、「子どもふれあいの森公園」へ。左手の丘を登ると、逗子、鎌倉の海と町が一望できるパノラマ台。弾む息を整えながら、湾の向こうに連なる峰々を「あれが大山かな、そして丹沢山塊、箱根連山かしら?」などとしばし時のたつのを忘れる。パノラマ台の下の落葉樹が林立する広場に水道があったのでここで昼食タイムに。
 鎌倉幼稚園前の見晴らしもなかなかのもの。これからもっと空気が澄めば富士山が優美な姿を現わす日も多くなるだろう。隣の公園の中の道を衣張山方面へ進むと、15分程で頂上へ。うっすらと汗ばんだ身に雄大な景色とさわやかな風が心地よい。足もとではイヌタデやシロヨメナがこっちも向いてと言っているよう。桜の木が多いので春はお花見が楽しめるのを確認。天園の方から衣張山を眺めると、きれいな円錐形の山容をしているが、下りは土のクッションに助けられながらも、つま先が痛くなるような長い下り坂に麓の浄明寺9丁目についた時は、思わず屈伸運動をしたほど。


古刹を訪ねる


杉本寺


荏柄天神

 田楽辻子を経て、鎌倉最古の寺、杉本寺へ。緑のビロードのような苔の階段は保護されているので脇道を登る。茅葺きの本堂がいかにも古刹にふさわしく郷愁を誘われる。
 杉本寺を背に右へ。一本目の第2小学校の角を右折し、板塀や竹垣の風情ある家並を楽しみながら歩くとやがて荏柄神社がある。この神社は源頼朝が大蔵の地に幕府を開いた時、この社を鬼門の神として特に崇敬したと伝えられている。
 境内左手上に絵筆塚があり、カッパ絵で有名な故清水昆さんが20年前に筆を納めた事に始まる。今年は10月26日(日)に漫画家の筆を供養する絵筆塚祭が開かれ、似顔絵描きコーナーなども催されるという。


大江広元、島津忠久の墓と
頼朝墓廟


西御門(にしみかど)の家並

 天神様を背に右へ。清泉小の校庭の前を右に入ると大江広元(鎌倉時代の政所別当)と島津忠久(頼朝の子という説もある)の墓がうっそうとした山ふところに抱かれてひっそりとある。その西隣には一一九九年に亡くなった頼朝公が葬られている頼朝墓廟。白旗神社の階段を登りつめたこの墓廟には、ポツポツと参る人が後をたたない。また、白旗神社の建っている場所は、かつて法華堂があり、三浦氏滅亡の地でもある。
 横浜国大付属校のあたりは大蔵幕府といわれた所で頼朝屋敷もあった所。今でも西御門、東御門という由緒ある地名が残っている。足は自然と鶴岡八幡宮、源平池へ。あとは若宮大路、小町通りなどのお店を愛でながらJR鎌倉駅到着はちょうど午後3時だった。




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