浜だいこんの花と荒磯が織りなす海岸美
毘沙門〜通り矢 潮風ウォーキング
1998/3/21号より
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毘沙門バイパス高架橋を望む磯でイソダマを獲る。
新鮮な磯の香りに夕餉も盛りあがることだろう

 待ちに待った春ですね。今月はビューポイントの宝庫、三浦の昆沙門海岸へのお誘いです。ぜひ、自分の足と五感でダイナミックな自然を味わいに出かけてみませんか。

早春の三浦台地へ
まっしぐら

 京急三浦海岸駅から三崎東岡行劔崎経由バスに乗車。海岸線をひとしきり走ったバスは、東京湾を背に松輪のなだらかな丘陵地をのぼる。やがて、春キャベツのみずみずしい緑で埋めつくされた畑が広がる台地に降り立つ(バス停昆沙門天入口)。土の香りと緑の広がり、春霞にかすむ大海原。これが三浦だという大自然からのメッセージが聞こえてきそうだ。台地から海を目がけてさっそうとかけ下りる。潮の香りが鼻をくすぐるあたりに来たら、ウグイスの鳴き声。とても初々しい。「この春、初めて聞いたけど、上手ね」などと、春まだ浅い3月上旬に歌の上手なウグイスに遭遇できたことを単純に喜びあう。このあたり、他にも5・6種類の鳥の声を聞いたのでバードウォッチングにも適していそうだ。
 坂の途中に三浦七福神の一つ白浜昆沙門天がある。この昆沙門天は海の中から出てきたといわれ、古来から漁業者の信仰の対象になってきたという。


大自然の
メッセージを聞こう

 昆沙門海岸の荒磯は三浦半島の海岸線の中でも最高傑作といってよいほど、岩礁の織りなす造形は美しい。ただただその壮大な荒々しさに見とれていると、大自然への畏敬というのだろうか、心が凛としてくる。
 そんな厳しい自然界にも確実に季節は巡り、今日はのんびりと波が陽光とたわむれ、キラキラ輝いている。“春の海ひねもすのたりのたりかな”そんな感じがぴったりのエメラルドグリーンの海は、ふだんの日々には忘れかけている何かとても大切な気持ちを思い出させてくれる場所…。傷心の北原白秋がこの半島の自然でいやされたように、眺めていると静かな喜びにひたされていくようだ。
 ここから宮川港・通り矢への磯歩きは変化に富み、関東ふれあいの道ハイキングコースにもなっているので安全だ。


海の生き物を
さがそう


圭介丸の木村さん

 この岩礁の道には、岩棚の上や下、岩の割れ目、潮だまりなどで、小さな魚や貝が早春の陽射しを浴びてのびのびと遊んでいるので、のぞいてみるとおもしろい。岩礁のきわにはヒジキやワカメ、カジメが揺れている。ヒジキは黒っぽいものではなく、緑色の小さな株ならおいしいよ、と圭介丸の木村さんが教えてくれた。手漕ぎの船でワカメ漁や見突き漁をしているという木村さんは天候に敏感だ。こんなおだやかに見える海だが東風(こち)が吹いてきたので、船を出すのをやめたそうだ。
 ビーチコーミングをしているのかな、と思わせる男性に出会った。彼の目的はテングサとか。今日の引き潮は午後3時頃。もし、海の恵みをお土産にと思ったら、そのころまで待つと天然の寒天が味わえるかも。もちろん、家に持ち帰り、水に晒して天日で干し、それをアメ色になるまで繰り返して、グツグツ煮溶かしてから。
 浜辺に目を転じれば、うす紫の浜だいこんの花が群生していてよい風情だ。


クライマックスは
盗人狩


ダイナミックな盗人狩付近

 昆沙門海岸には海蝕洞窟が多い。これらから鹿の骨を焼いて吉凶を占った「卜骨(ぼっこつ)」がわが国で初めて発見されている。弥生時代の漁労用具や農耕用具などの出土品も多い。
 海の幸で生きていた太古の人々の暮らしを想像して見ると、確かに荒々しい岩礁に自然の厳しさを感じるが、それがかえって横穴式の住まいを与え、小さな入江がいくつもいりくんでいるため、波が小さく漁場にも適していたはずだ。船を操って漁をし、海鳥を捕獲し、陸の植物からも日々の糧を得ていたのだろう。暮らしやすいところだったかもしれない。
「かながわの景勝五十選」の一つに数えられている盗人狩(ぬすっとがり)。その洗濯板状に広がる波食棚と海蝕崖のコントラストの見事さは今も目に焼きついているが、その名の由来は昔、追手に追いつめられた盗人がここで渦巻く波に足をすくませて捕まったことからという。もう少しロマンチックな地名が欲しかった気がするが…。


いつまで使われていたのか、塩田跡があちこちに

 さあ、ここから製塩所あとを見ながら宮川港まではすぐ。断崖の上に突如出現した風力発電のための大きな風車が2基、頭上で回っている。道なりに丘に登り、宮川町のバス停から帰路に向かう手もあるが、もう少し磯歩きの醍醐味を楽しみたいなら八景原を経て、通り矢まで歩くコースもおすすめだ。(歩程約2時間)




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