
(題字:高橋幸子)
INSIDE OF AZUMA-MIRROR
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頼朝が西行法師の餞別に贈った銀細工の猫は、掌にのる程の可愛い眠り猫だったという。精巧な細工の逸品に違いない。これなら旅の荷物にもならず、記念の品としてもふさわしいと、頼朝は気を遣って西行に敬意を表したのだ。ところが西行は御所の門を出るが早いか、近くで遊んでいた子供に惜し気なく銀の猫を与えてしまった。人々はその無欲に呆気にとられ、頼朝は軽く一本取られたと苦笑で済ませたようである。西行の人徳であろう。だが別説によると、これは頼朝が自分を眠れる銀の猫にたとえ、奥州藤原氏を金の鼠に見立てた謎がけではないかとしている。奥州の入口には白河の関のほか、念珠(ねず)の関がある。鼠の関がなまったもので、昔から奥州は鼠に例えられ一種の陰語とされたそうだ。咄嗟に頼朝の投げた謎を悟った西行は、銀の猫を無心の子供に与え奥州まで持ち歩かぬことで、謎解きに答えたのであろう。確かに銀の眠り猫は謎めいた寓意を秘めている。西行の平泉での行動は記録がないが、その年の10月に砂金四百五十両が京へ届いているから、勧進の役はしかと果たしている。 (郷土史研究家) |
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