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朝日アベニューがホームページ上で、三浦半島をぐるっとまわっている国道 ご応募いただきました10編の作品の中から次の作品が入選となりました。 |
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| 弟が生まれた五歳の私は、一身に受けていた母乃愛が弟へ向けられているという思いから、預けられていた母の実家を飛び出し自宅へ続く134号を辿る。道の末に待つのは? |
| 五歳の夏、弟が生まれた。難産から帝王切 開で誕生した私は、誰の姉にもならない筈だったのに。お産の前後、私は住み慣れた三春町を離れ、母の実家がある佐原へ預けられて
いた。弟誕生の報を受けた私は、祖母に連れられて訪れた産院で保育器の中の新しい家族に対面した。弟はよく世間で言われる「しわくちゃな猿」ではなかった。すべすべの肌と全てが小作りながら整った造作を持っていた。 「ミコちゃん、来てくれたの。ありがとう」 他人のように見える母が掠れた声で話し掛けてくる。どことなくやつれ、足取りもおぼつかないように見えた。でも、母が今までと違って見えるのは、そのせいだけではなか た。私は自分の母の目がまン丸だと思っていた。今、私を見ているのは切れ長の目。そして母の視線が保育器をのぞき込む時、私の知っているまン丸の目が横顔から輝いていた。 弟はしわくちゃな猿に育つどころか、日を追う毎にお人形のような愛らしさを増していった。赤ん坊を見慣れている筈の産院の医師 も「この子は天使だ」と感心していた。 弟を連れた母が退院して三日経った夕方、ぼんやりヒグラシの声を聞いているうちに、涙が頬を伝っているのに気づいた。私は腰掛 けていた縁側から飛び降り、サンダル履きの まま山道を下り始めた。矢も楯もたまらず家に帰りたかった。 道は石ころだらけ。所々に出来た水たまりの上をアメンボ達が滑ってゆく。畦道抜けようやく平坦な広い道に出たが、井田、池田、根岸、蛇沼の地名通り、池や沼や田に囲まれた田舎道が続く。 私はそこから少しでも早く逃れようと歩を進める。サンダルの緒がこすれて親指と人差し指の間が痛い。 |
皮がむけているかもしれない。それを確かめる間も惜しんで、私は田園風景を後方に蹴飛ばし、建て込んだ住宅街を引き寄せようとする。いつの間にか傾いた陽が、丈の高い芦の葉を通して額を照らす。 グラウンド横を抜け、刑務所の壁まで来たとき、街の灯が点り始めた。どこにいても海の方角は判る。潮風を正面に受けて歩けば、家はすぐそこ。その時左手を閉ざしていた壁が跡形もなく消え、下校を急ぐ中学生達の笑いさざめく校庭へ視界が拓る。道の果ての交差点に揺れる大小二つの影。弟? いいえ。幼い頃の弟の愛らしさ、夫のがっしりした骨格を兼ね備えた二歳になる息子の薄紅の頬と、夫の少し大き過ぎるお腹に私は寄り添う。 まン丸な目が四つ、今の私を包んでいる。 |
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