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2003年の7月8日〜10日にルーブル美術館内特別展示場「カルーゼル・ドゥ・ルーブル・ルノートル」で行われた展覧会は、初日から観客のすしずめ状態が続くほど盛況を極めた。そんな中、藤田さんが出展した「能」をテーマにしたパッチワーク・キルト作品「石橋(しゃっきょう)」がグランプリを受賞した。
この展覧会は海外芸術交流協会日本事務局の主催で、ルーブル美術館210周年を記念し、日本とフランスの文化・芸術交流の促進と相互理解をより深める趣旨で開催され、日仏合計820点(油彩画、水彩画、日本画、水墨画、書道、工芸、彫刻、陶芸、写真他)が出展された。
藤田さんが出展を依頼されたのは、パッチワーク作品に日本の古典芸能である能をテーマにしている作家がごく僅かであり、能の心象風景を藤田さんなりに捉えユニークに表現しているのが主催者側の目にとまったようだ。グランプリは海外芸術交流協会選考委員会とフランスパリ美の革命展選考委員会によってフランスを始めとする海外で大いなる評価に値する芸術家40名に贈られた。
藤田さんが受賞した「石橋」は、白い獅子と子獅子が戯れながら石橋を渡る様子を牡丹の花で表現した、見る人を楽しくさせてくれるような躍動感あふれるダイナミックな作品だ。また、一番印象深かった作品を来賓者とフランスの一般観客の投票により選出した、トリコロール・ドゥ・芸術平和賞もあわせて受賞した。
この作品を制作したのは13年前。母親業と難病の夫と乳がんの実姉を看病しながらの作品作りは、家族に涙を見せずに制作に打ち込める早朝に当てられたという。作品の素材は母の形見の刺繍の帯。娘5人を帯に刺繍をする内職で育ててくれた母への想いと姉を元気づけたい一心で、気迫をこめて仕上げた思い出の作品だそう。その後、姉と夫は亡くなったが、ここまで支えてくれた息子2人とパッチワーク教室の生徒さんには心から感謝しているという。
作品制作に専念できるようになった現在は、能をもっと奥深く知り作品に生かせるように鈴木佐太郎先生(能楽師・観世流師範)に師事し、謡や舞をお稽古しているという。ただ舞台を観るだけでなく、体得することで能の細かい決まりごとなども知ることができるので、作品に深みが出せるという。
毎夏開かれる「よこすか薪能」の演目をイメージしたパッチワーク作品を横須賀芸術劇場のロビーに発表して今夏で5回になるが、それを楽しみに毎年訪れる人も多くなってきたようだ。来年の薪能は、能の息吹がどのように吹き込まれた作品が生まれるのだろうか、期待したい。(2003年10月号) |
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