朝日アベニュートップ

 

  県立横須賀高校の野球部で熱心に活躍していた時代、ショパンの曲をふと耳にした宮本史利さん(29歳)は、「なんて素晴らしい曲だろう」と深い感銘を受けたという。と同時に「こんな曲を作り、提供できる人になれたらいいな」との感想を持った。野球も続けながら早速合唱部に入部、そこで芸大出身の湯川晃平先生の指導を受け、音を楽しむようになった。
 大学は商学部に進んだものの、作曲家への道を捨てきれず、ひたすら作曲の勉強に時間を割きながらも、高校音楽部OBの白樺湖合宿に顔を出したり、横須賀芸術劇場の合唱団に所属もした。また、大学1年の時はコールよこすかに応募、姉妹都市親善訪問でザルツブルグのジャパンウイークに出演と、積極的に歌う機会を捉えていった。
 大学3年の時作曲で芸大を受験するが惜しくも2次試験が通らず、目指していた作曲家の道ではなくオペラはどうかというアドバイスがあった。そこで自分はオペラ歌手になろう!と決意する。他の人よりかなり遅いスタートとなったが、白幡武先生の特訓を受け念願の芸大を受験、声楽科に入る。
 「オペラ」と言うと、一般的にはなんだか堅苦しく敷居の高いものという印象はないだろうか。昔、オペラは貴族の音楽で、社交の場でもあった(華やかな貴婦人がオペラグラスを片手に…、という図を想像してしまう)。やがて貴族のものだったオペラを庶民に近付けたのがモーツアルト(魔笛)で、テーマも宗教や歴史からゴシップ的なものや喜劇まで演じるようになった。
 さて、芸大を卒業した宮本さんは、透明感のある美しいバリトンで大活躍、今年2005年はフィレンツェを代表するサン・マルコ教会のミサで専属ソリストを務め、歴史ある教会内に清らかで荘厳な歌声を響き渡らせた。「歌っていてこれ以上の感動はなかった」と語る宮本さん。また、8月末のアンサンブル・フロイデサマーコンサート(横須賀市文化会館)では、昔シチリアにあった出来事のオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の馬車屋のアルフィオ役を見事に歌い演じきった。そんな宮本さんだが、この秋からより高度なものを求めてイタリアのパルマに留学するそうだ。この10月10日のはまゆう会館での壮行演奏会では、彼を称え応援する拍手が鳴り止まなかった。
 留学先のパルマは、かのヴェルディを輩出した地であり、トスカニーニの生家も残るオペラの世界では重要な地域で、そしてなにより聴衆が厳しいという。留学でよりいっそう大きくなった宮本さんのバリトンを期待したい。また、将来は名だたる劇場の専属歌手になりたいとの夢もぜひ実現してほしいものだ。
 「オペラを楽しんで頂くために、若手もいろいろ工夫していますので、ぜひ劇場に足を運んでください」、とのメッセージだった。