--------------
よこすかon my mind <8>   
--------------
野口久光先生の思い出 
--------------
 もう亡くなられたが、野口久光さんというジャズ評論家がいらした。この方は歯に衣着せぬ毒舌評論家として有名であったが、大阪のラスカルズのライブには度々お見えになり、「高橋さんのアルトはいいねえ、僕は好きなんだよ」と言って戴いた。お世辞9割としても、後にラスカルズのレコードのライナーノート(解説書)に“高橋のアルトが光っている”等とおだてたところを見ると、下手くそだけど素朴な演奏が新鮮に聞こえたのかも知れない。
 大阪から東京への帰任後何年か経過し、あるジャムセッション(飛び入り自由のライブ)に野口先生がお見えになった。早速駆け寄って挨拶する。「先生、お久しぶりです」「ああ、どうも」とそっけない。そりゃそうだよな、天下の大先生が俺のことなんか覚えてる訳ないよな、と思い席に戻る。間もなく私の出番で2、3曲演奏し、終了後、向こうから先生が「高橋さん何処だ」と探していられる。「先生ここです。先ほどご挨拶はノ」「やあ申し訳ない。今、貴方の音聴いて思い出したんだ、いいねえ、高橋さんのアルトは」
 先生が叙勲を受けられたのはその数年後であった。
-次へ-
-前へ-
-TOPへ-
--------------------------------
(c)2002-2003 Asahi Avenue
avenue@syonan.to